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長女の小学校卒業式に行ってきたよ。

ママちゃんが子どものセレモニーでは決まって号泣するのに対して、ぼくはまあ男だしいつもそんなに感動に涙するってことはなかったんだけど、今日は泣いちまったねえ、恥ずかしいくらいにさ。

まずあの小学生の合唱の澄んだソプラノの歌声が、ふだんギスギスしたしがらみや妬み嫉(そね)みなんかの雑音に生きている大人たちには美しすぎて、もうそれだけで目頭が熱くなるし、人前でアガっちゃうたちのぼくなんかは、みんなの前で懸命にピアノ伴奏する少女たちの健気な姿に胸を打たれてすでに心はふるふるしてて、そんな中で体育館のかまぼこ形の天井を眺めながらピアノと歌声に耳をすませていたら、いつの間にか親父のことまで思い出して、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになってた。

いつもブログ読んでくれてる人にしたら「おまえまだ親父の死を引きずってんのかよ」って思うかもしれないけど、引きずるはおろか、遺されたあれこれの対処とか激変した家族との現実とかに追われて、半年が過ぎた今でもまだちゃんと親父の死と向きあえていなかったんよ。

でも今日、娘の卒業式で、父親であるぼくにしたらついこの前生まれたばかりだと思っていた幼い娘が小学校を卒業するという時の流れの現実を目の当たりにして、子どもは育ち、親は死に、俺たちはただ今日を生きていくんだなあ、なんていう、よくわからないけど世の真理めいたことを思い浮かべながら、身体の内側から喜びに似てるけどきゅっと切ない感情が沸々とわきあがってきて、

ああ、いろいろあったけども、ぼくは親父のことを好きだったのか憎んでいたのか憧れていたのか畏れていたのかよくわからなかったけど、それ全部ひっくるめて、幼い頃から今日に至るまで、ぼくは親父が大好きだったんだなと、ぼくにとって親はあなただけだったんだな

ということに、ようやく気づけた気がする。

その「いろいろあったけども、ぼくはあなたが大好きでした。あなただけでした」という言葉が脳裡に流れた途端、ぶわっと涙が溢れて、

親と子ってこういうもんだよなあ、好きとか嫌いとかそんな簡単な感情で割り切れない、一番身近な、自分でない自分みたいな人だもの、お互いが理解して、気づいて、許して、許されていたのだと気づいて、澄んだ心になれるのには、膨大な時間といろんなことが必要なんだなあって、

あちゃこちゃ考えながら、卒業して新たな世界を歩き出す娘に、間違ったっていいから、ただただ自分を信じて好きなように生きてほしいと、たまには親らしいことを願ってみたりしたのである。

自分で説明するのも気恥ずかしいけど、この気づきや涙が、ぼくの幼少期や親父やわだかまりに対する「浄化」であり、それは古来から言われているように、ハレとケとケガレの日々の流れの中で、つまり娘の卒業式という「ハレ」の舞台によって、ケガレ(気枯れ)を浄化し、少しずつケの日々に戻っていくのだなあと感慨深く思う。

あと震災のことも思い出したね。この前心が揺さぶられる震災後のレポート記事を読んだせいもあるんだけど、人はホント、死ぬよ。いつ死ぬかわかんねえよ。どんなに安全な社会になったって、上手に隠蔽されてるだけで、死はいつもぼくらの日常の裏にぴったり貼りついてる。

ハレの日を迎えたかわいい愛娘でさえ、いつ何があるのかわからないなんて思ったら、親としたら想像しただけで胸が張り裂けそうになるけど、でもそういうのもひっくるめて「そういうものだ」ということを受け容れられたら、今目の前の現実、ただそこに笑っている家族、みんなでごはんを食べられるというそれだけで、もうしあわせすぎて涙が出ちゃうじゃねえかコンチクショー。

なんていう風に、日常で狭くなった視野をぐっと広げて、ぼくらが前に進む力をくれるのも、こういうハレの舞台だよね。格式ばったセレモニーというのは基本的には苦手だけれど、格式ばっているからこそ真摯な姿勢で懸命に取り組む子どもたちの顔を見ていたら、こういうのもまんざらでもないな、という気がしたよ。

卒業証書を受け取る子どもたちはみんな、壊れたロボットみたいな動きで、緊張でガチガチのヤバ顔をしていたけど、人ってみんなこうやって、ヤバ顔して歩いていけばいいよな、なんて思ったりもした。大人って、ある意味では、まわりの人にこのヤバ顔を見せないことが人生の第一目標みたいになってない? ヤバ顔見せないために無理して、がんばって、人をけなして、自分を責めて、死んでいく。生きてりゃいろいろあるさ、狼狽えて慌ててヤバ顔になっても、それでもそのまま生きてりゃいいよ。

だからね、いかなる理由があっても、他人をディスってる大人はバカヤローですよ。みんなしあわせになりたくて生きてて、いろいろあるから間違えることもあるわけで、そんな他人のいろいろに文句言ってる奴はバカヤロー。そういう奴をバカやろーって言う俺もバカヤローっていうね。

昨日見た映画で言ってたよ。

「人は正しい場所に戻るために、間違った選択をすることもある」

んだって。ともあれ、みんな、おめでとう。春だね。茅ヶ崎にもいい風が吹きはじめたよ。

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