走るのが、ずっと嫌いだった。
学生の頃から、バスケ部の頃から
大人になっても、毎日走ってるときも
しょうがなく、走ってた。
体力維持のため
運動不足にならないため
バリバリ動けるように
太らないように
ルーチンだから
って、なんらかの目的のために。
でも数年前、あるとき
ある夏の気怠い午後
退屈で、心身が重くて
唐突に走りたくなって
汗だくになりながら海辺を走ったら
最高にきもちよくって
俺、走りたかったんだって、気づいた。
走るのって気持ちいいんだって、知った。
知った。
人って、同じ刺激や同じ感覚に対して
違う気持ちを抱くらしい。
ある人は、走っているときに感じる肉体の躍動や呼吸や鼓動や疲労を「苦しい」と感じ
ある人は、同じそれを「気持ちいい」と感じる。
同じ刺激なのに
「苦しい」とか「気持ちいい」とか
真逆の気持ちになるのは
それぞれの過去がつくりだした捉え方でしかないんだって。
ふははは。
まったくその通りだ。
走るのって
つまんなくって
苦しくって
大嫌いって思ってたのに
走るって
気持ちいいんだって
「知った」ら
知っただけで
知っただけなのに
なにもしてないのに
走るのが気持ちよくなった。なんだそれ。
そもそも動物は
身体が停滞しはじめたら
運動することで活性化したくなるようにできてる。
もともと、走るって、気持ちいいんだって。
そういう
本当は気持ちいいはずなのに
苦しいことっていうのは
余計な人を見て
余計なことを考えているからだって
偉い禅のお坊さんが言ってた。
他人の目とか
他人の言うこととか
昨日のこととか
明日のこととか
余計なことを頭のなかから追い出すと
ちゃんと、身体が、動きだすって。
ちゃんと、心が、感じるんだって。
海辺を走るって、言うまでもなく、最高だよ。
苦しいが、気持ちいいになるなんて、なんて素敵なことだろう。
次は、何が気持ちよくなってくれるんだろう。