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和田誠さん、親父がよく通勤途中ですれ違ってたらしくて、いつも誇らしく話してた。僕も大好きだった。

映画『麻雀放浪記』や『怪盗ルビイ』、村上春樹との共著『ポートレイト・イン・ジャズ』を見せられ、まるで自分の作品みたいに自慢してたっけ。

亡くなったというので、あらためて書棚を眺めてみると、気にかけていなかったけど、数多の小説の表紙に和田さんがおられた。

往年の映画ファンであれば、和田さんの名前は思い出さずとも、あの力のぬけたタッチのポートレイトが脳裡に蘇るかもしれない。

映画、ジャズ、文芸、エトセトラ。僕らのこころを豊かにしてくれる文化に、いつも和田さんの作品が寄りそっていたんだなと、感慨深く思う。

和田誠さんの長男で、TRICERATOPSの和田唱さんのコメントが素敵だったので引用させていただく。

「今思えば、きっと、親父なりにベストなタイミングでの旅立ちだったんだろう。親父はキャンプとか釣りとかスポーツとは無縁で、その辺のことは一切教えてくれなかった。お陰で俺はインドア派だし、スポーツのルールも大体知らない。でも親父は映画を教えてくれた。ジャズを教えてくれた。ルールに縛られないこと、好きなものは好きでいいこと、自分がこうだと思ったら貫くことを教えてくれた。お陰で俺は幸せな人間だ

うん、僕もだ。おかげで、しあわせに生きてる。親父もあっちで和田さんと酒でも飲んでるかな。

ジャズとウイスキーと、煙草が吸いたい気分だ。ハイライトって、まだ売ってるんだっけ?

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