@RyoAnnaさんのエントリに乗っかって、好きな小説を紹介します。

5冊に絞るのはなかなか骨が折れるので、今日はテーマを絞って、僕が若い頃に衝撃を受けた作品をシェアすることにします。

独り暮らしの部屋で小説の魅力にとりつかれてむさぼるように読んでいた『あの部屋の光景が浮かびあがる小説』5選です。

重力を忘れる小説 #5novels – #RyoAnnaBlog

 

 

 

 

風の歌を聴け(村上春樹)

一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。

引用元: (「BOOK」データベースより)Amazon.co.jp: 風の歌を聴け (講談社文庫): 村上 春樹: 本.

村上春樹が群像新人賞を受賞したデビュー作。それまでの日本文学にはなかったクールで簡潔な文体は当時から物議を醸したようで「こんなもの小説じゃない」と言われることもあったとか。後に数々のヒットを飛ばしている「世界の文豪」だが、僕は未だにこの作品をはじめて読んだときの衝撃が忘れられない。ドライで瑞々しい他に類を見ない物語。何度も読み返す数少ない小説の一つ。

二進法の犬(花村萬月)

家庭教師・鷲津兵輔が、生徒として引き受けることになった女子高生の乾倫子。彼女の父は、少数精鋭の武闘派博徒乾組組長・乾十郎であった。鷲津は、乾組という組織、十郎の「白い黒か」を徹底する究極の生き様、そして倫子の凛とした存在に、しだいに自分の所在を見いだしていく。やがて鷲津が手にしたある情報が、乾組を揺るがす大きなうねりを引き起こす。博打、抗争、性愛…激流のなか、鷲津が手にしたもの、それは―。ひとの心が抱える深い闇―その暗黒を重厚に、そして狂おしいまでに切なく描き、あらたな“倫理”を世に問う、芥川賞作家・花村万月の超大巨編、ここに登場。

引用元: (「BOOK」データベースより)Amazon.co.jp: 二進法の犬 (カッパ・ノベルス): 花村 萬月: 本.

芥川賞作家・花村萬月がカッパ・ノベルスに書いた一冊。二段組で700頁超という超大作ながら、最後まで一気に読ませる物語と筆力は圧巻。白か黒かの博徒の世界とコンピュータの二進法が絡みあいながら、白か黒に染まれない人間たちが生きていく。コンピュータの歴史やリアルな博打シーンが描かれる中、初期の花村作品に共通する「偽善」や「暴力」「性」について考えさせられる、完成されたエンターテイメント作品。「エンタメとはかくあるべき」小説。

旅のラゴス(筒井康隆)

 北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

引用元: (「BOOK」データベースより)Amazon.co.jp: 旅のラゴス (新潮文庫): 筒井 康隆: 本.

筒井康隆の才能に戦慄したSF長編。大学生だった僕は、通学の電車内でこれを読み、授業中にもこれを読み、帰宅途中にもこれを読んだ。SFというジャンルがこれほどまでに面白いのか!と、それからむさぼるように筒井作品を読んだ。小説が漫画や映画以上の娯楽であることを知った作品。

ぼくは勉強ができない(山田詠美)

ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ―。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。この窮屈さはいったい何なんだ。凛々しい秀美が活躍する元気溌刺な高校生小説。

引用元: (「BOOK」データベースより)Amazon.co.jp: ぼくは勉強ができない (新潮文庫): 山田 詠美: 本.

「勉強よりも大事なこと」という一見安易なテーマを、軽快な展開ながら深く描いた一冊。大事なことはたくさんあるけれど、女の子にもてる、というのは真面目に考えてもたしかに人生においてとても大事なことだ。世の批評を物ともしないエイミーの思想を味わえる大好きな作品。僅差で『風葬の教室』もかなりの衝撃だったので加えておく。

ぼくと、ぼくらの夏(樋口有介)

高校二年の夏休み、同級生の女の子が死んだ。刑事の父親と二人で暮らすぼくは、友達の麻子と調べに乗り出したが…。開高健から「風俗描写が、とくにその“かるみ”が、しなやかで、的確であり、抜群の出来である」と絶賛され、サントリーミステリー大賞読者賞を受賞した、青春ミステリーの歴史的名作。

引用元: (「BOOK」データベースより)Amazon.co.jp: ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫): 樋口 有介: 本.

ミステリーというより、そのドライなタッチとキャラクターにやられた作品。ひとことで言えば「あだち充の小説版」。「こんな高校生いねーよ」というくらい大人でクールながら心優しい主人公たちが、眩しくて狭い箱庭のような『夏』のなかで描かれる。ほんのり甘酸っぱい青春小説。開高健の評も頷ける。この夏に読んでほしい。

(次点)風葬の教室(山田詠美)

私の心を束縛し、私の自由を許さない美しき親友のえり子。彼女の支配から逃れるため、私は麦生を愛し、彼の肉体を知ることで、少女期からの飛翔を遂げる「蝶々の纏足」。教室という牢獄の中で、生贄となり苛めをうける転校生の少女。少女は自分を辱めた同級生を、心の中でひとりずつ処刑し葬っていく「風葬の教室」。少女が女へと変身してゆく思春期の感性をリリカルに描いた3編を収録。

引用元: (「BOOK」データベースより)Amazon.co.jp: 蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫): 山田 詠美: 本.

いじめがまた社会問題となっている昨今だからこそ、5選と言いながらも追加して紹介しておきたい短編集。いじめられている子やいじめている子のみならず、いじめを黙認している子も含めて、学校という閉鎖的で逃げ場のない場所で生きていく中高生に読んでもらいたい一冊。大切なのは、いつだって自分のこころ。