instamatic 100 / Robert Couse-Baker
累計販売数が12万を超える人気カメラアプリ『OneCam』の開発者@AppleWalkerさんにはじめてお会いしたとき、僕が失礼千万にもそう言うと、彼は会場に集まったたくさんのiPhone系ブロガーたちを見つめながら、とろけるような笑顔で言った。
「ここにいる皆さんのおかげですよ」
そのときは煙に巻かれたようでよくわからなかったのだけれど、今ならはっきりと言える。
なぜ多くのiPhoneユーザーやブロガーが、この地味なアプリを賞賛し、メインカメラとして使うのか。
iPhoneアプリ不動のエース。
僕にとって、iPhoneホーム画面の花形ポジションはDockのいちばん右だ。
OneCamはその他大勢のカメラアプリと一緒くたにされたフォルダの中で、じっと出番を待つリザーブの一人でしかなかった。だが彼は、使うたびにその秘めたる実力を発揮し、ひっそりとフォルダからホーム画面に登壇し、いつしか標準カメラアプリを押しのけて、Dockのいちばん右に躍り出た。今やなくてはならない不動のエースだ。
「OneCamはシャッター音を消すことができるんだよ」
そう言われても僕の心は小石の波紋ほども揺れなかった。盗撮するわけじゃないんだし、シャッター音を気にするほうがやましい気持ちがするじゃないか。
だが実際に、混雑する駅や人が行き交う商店街や洒落たトラットリアで写真を撮ってみると、シャッター音がしないということが、どれだけストレスのないことなのかが身をもってわかった。
後ろめたいことをしていなくても、ふいにシャッター音が聞こえれば、他人は怪訝な面持ちであなたを見るのだ。
「OneCamはすべてが速いんだよ」
そう言われても僕はふうん、としか思えなかった。そんなに生き急がなくたって、写真を撮るときくらい、じっくり被写体をとらえればいいじゃないか。
だが実際に日常で使ってみると、アプリをタップしてからの起動の速さ、被写体へのフォーカスの速さ、撮影してからの保存の速さが、どれだけ写真撮影を快適にしてくれるのかを実感した。
音がしなくて、あまりにも速いので、逆に本当に撮れているのかと不安になるほどだ。
「OneCamは小さいサイズで撮影できるんだよ」
僕はかろうじて舌打ちをこらえた。より美しくより大きな写真を撮影できる技術があるのに、どうしてわざわざ汚くて小さな写真を撮らなければいけないんだ。
だが実際に毎日たくさんの写真を撮って、ブログやFacebookやTwitterでシェアしたり、Apple TVで家族と眺めたりしてみると、OneCamの「852 x 640」というサイズがどれだけ理にかなっているのかを実感した(OneCamは4種類のサイズから選択可能)。
iPhone5の標準カメラのサイズは「3264 x 2448」。これは異常と言っていいくらい大きなサイズだ。27インチiMacのディスプレイ(2560 x 1440)にも全体表示できないのだから。
下の二枚はそれぞれOneCamと標準カメラで撮影した写真。記事掲載にあたって両方とも同じ倍率で圧縮しているが、肉眼で違いを見つけるのは困難だ。
見た目とは裏腹に、データサイズはOneCamの292KBに対し標準カメラは10倍以上の3.5MBもある。
1000枚撮影した場合、OneCamなら300MBほどでおさまるのに対して、標準カメラだと3GBにもなってしまう。HDDの容量を圧迫するのはもとより、オンラインで閲覧したりシェアするのにも快適性の差は歴然だ。
写真を撮る機会が増える。
街角で不意にステキな瞬間を目撃することがある。ただそこにあるだけで目頭を熱くさせる夕陽に出会うことがある。よくわからないけど撮っておきたい電柱の影が伸びている。
今までは周囲の目を気にしていたような場面や、瞬間的な対応を迫られる場面でも、OneCamなら躊躇せずシャッターを切れる。
さっと起ちあげて、音もなく切りとって、何事もなかったかのように歩み去る。
シャッター音がしなくて、動作がスピーディであるというそれだけで、日常で写真を撮る機会が大幅に増えたのは間違いない。
ソーシャルに特化した新しいスタンダード
How to take a photo with your iPhone, from as low a position as possible / mikebaird
貴重な瞬間を吟味してシャッターを切ってプリントして眺める時代から、たくさん撮って取捨選択をしてオンラインでシェアする時代へと変動した。
iPhoneで撮影するのはほとんどが日常のスナップだろう。大切な記念写真は高機能なデジカメなり一眼レフを使えばいい。
OneCamは、静音とスピードでiPhoneによる日常の写真撮影を快適にし、適切なサイズでFacebookやTwitterなどのSNSやブログなどの情報発信へのシェアを容易にする、ソーシャル時代にマッチしたカメラアプリだ。
撮るアプリといじるアプリ
Chopsticks / Ian Muttoo
で、食事はミイル
で、シェアはInstagram
やEyeEm
でと、写真加工からシェアまではそれぞれ別のアプリを使っている。
そのすべての入口となる写真は、OneCamで撮影する。
これほどまでに「撮る」というカメラの基本性能に特化したアプリは他にないからだ。
その他の「かゆいところに手が届く」機能
視野率100%
忘れてならないのは、見たそのままを撮影する視野率の問題だ。
iPhone5はディスプレイの比率が変わったために、表示されている映像と撮影した写真が変わってしまうのだが、OneCamなら見たままを撮影することができる。
▶ そのままを残したい!私が『OneCam』を愛用する、もう1つの理由 | Livlove’s ios life.
バックライト点灯
OneCamは、撮影時に光るフラッシュではなく、撮影前から常時バックライトを点灯させることができる。これのおかげで色合いや写り具合を確認してから撮ることができる。
本当に大切なものは目に見えない。
OneCamを初めてダウンロードして、とりあえず身近なものを撮影してみても、きっと震えるような感動は降りてこないだろう。新しいiPhoneアプリを使ってみるわくわくした気持ちは、瞬時にしぼんでしまうかもしれない。
だがそここそが、OneCamのすごさなのだ。
日常に転がるなんでもない瞬間を撮影していくうちに、じわじわと見えてくる静かで目立たない実力。
OneCamの良さは目に見えない。耳にも聞こえない。主役よりもいい仕事をするのに、決して目立たない地味な脇役だ。
OneCamをWeb検索すると、じつに多くのブログで長い期間にわたって紹介されているのがわかる。中でも「〜の理由」という言葉をタイトルに用いている記事が目につくだろう。
そう、教えてあげたいのだ。自分がOneCamを選ぶ理由を。OneCamの目に見えない実力を。
心で見なくっちゃ、物事はよく見えないってことさ、肝心なことは目には見えないんだよ。
___『星の王子さま』サン・テグジュペリ