映画

人生はつらくても、甘い夜はちゃんとある。大事な人はきっとそばにいる。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

マイ・ブルーベリー・ナイツ スペシャル・エディション [DVD]
 

アメリカのロードムービーを見ていると、必ずドライブインみたいな、いわゆるアメリカン・ダイナーというところで食事をするシーンが出てくる。

食べてる料理はあんまり映らないんだけど、なんかパンケーキとかスクランブルエッグとかパイみたいなのをフォークで乱雑に口に運んでいる姿を見ていると、すごく美味しそうで、いてもたってもいられなくなる。

映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』にも、とても素敵なカフェが出てくる。

失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、恋人がよく訪れていた近所のカフェに通うようになる。「ふられた理由が知りたい」というエリザベスに、カフェのオーナー・ジェレミー(ジュード・ロウ)は言う。

「理由なんてないさ。パイやケーキと同じ。毎晩店を閉めるとき、チーズケーキとアップルパイは売り切れ。ピーチ・コブラーとチョコレート・ムースもほぼ完売。でもブルーベリー・パイは手つかずで残ってしまう」

「何がいけないの?」

「理由なんて何もない。パイのせいじゃなく注文がない。選ばれないだけ」

売れ残ったブルーベリー・パイは、食べてみるとすごく美味しくて、エリザベスはなんとなく納得してしまう。

Mmm... twice berry pie
Mmm… twice berry pie / jeffreyw
 

毎晩話をしているうちに次第に惹かれあう二人だが、エリザベスは傷心を抱えたまま旅に出てしまう。メンフィスではアルコール中毒の警官と別れた妻の切ない愛情に触れ、ラスベガスでは人を信じることができないギャンブラーの美女(ナタリー・ポートマン)と旅をする。

エリザベスは旅先で様々な愛のかたちを見つめるうちに、人を愛する、人を信じるということをあらためて考えさせられて、ジェレミーに会うためにニューヨークに戻る。

傷ついて、旅に出て、大切なものに気づいて、帰ってくる。物語はそんなありきたりなものだけど、しっとりと心に沁みるのは、僕もすこし人生に疲れているからだろうか。

New England Diner
New England Diner / ReneS
 

本作の公開は2007年。当時からノラ・ジョーンズの熱烈なファンであった僕は、大好きなシンガーである彼女が女優をやるということが認められず、なかなかこの映画を観る気になれなかった。

しかも美しい映像で恋愛を描くことにかけては右に出る者のいないウォン・カーウァイが監督で、相手役はジュード・ロウ、そして映画のタイトルがこんなにスウィートでは、どうせ甘ったるい恋愛映画に仕上がっているだろう、と思いこんでしまっていたのだ。

余談だが個人的に、ナタリー・ポートマンはこの映画が一番可愛いんじゃないだろうか。派手で生意気なギャンブラーという設定は、場所が日本ならギャルといったところだろうけど、そのはすっぱなキャラが思ったよりマッチしていたし、彼女が秘めた父親への想いもまた、余計に切なく感じられた。

ジュード・ロウは王道すぎる美男子で、こんな男がカフェのオーナーやってたらいくらでも女性客が来るわい、とつっこんでやりたいところだが、来世は彼のような容姿で生まれてきたい、というのが偽らざる僕の本音だ。英国なまりも悪くない。

男女の愛は甘いだけじゃない。すれ違いもあるし、選ばれないことだってたくさんある。人生はブルーベリー・パイほど甘くはない。けれど人生には、やっぱり甘い夜もちゃんとある。大事な人はきっとそばにいる。そんなことを教えてくれる映画だ。

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