そもそもこの映画を観たい人というのは3種類に限られると思う。1976年公開のデ・パルマ版オリジナルのファンか、クロエ・グレース・モレッツを見たい人か、ホラーならなんでも見るマニアか。
僕はデ・パルマ版の熱烈なファンでありながら、キャリーを演じるクロエちゃんが見たかったタイプ。そんな僕にはとっても楽しめる作品でした。
ぜんぜん怖くないですこの映画。深夜に部屋を真っ暗にして一人で観たんだけど、ビビったのは冒頭の不気味な出産シーンくらいで、あとはホラー映画と言うよりはクロエの青春映画という感じ。
ていうかオリジナルのファンなら誰しもが「クロエはキュートすぎてキャリーじゃない!」と感じると思うんだけど、まさにその通りで、クラスでいじめられててもママに変なことされてても、ちっともかわいそうに見えないんです。
オリジナルを演じたシシー・スペイセクなんて、もう立ってるだけでかわいそうで、哀れを通りこしてこの人死んじゃったほうが幸せなんじゃないか、と思わせるほどの薄幸ぶりでしたからね。
それに比べてクロエちゃんは出てきたそばから可愛いし、その生意気にとがった鼻とくりっくりのお目々が目立ちすぎて、いじめてる連中のほうがみすぼらしいんですもの。
たぶんデ・パルマ版があまりにも有名で強烈だった故に、リメイクが決まった時点で「オリジナルとは違うものにしよう」というスタンスがあったんじゃないでしょうね。天地がひっくり返ってもオリジナルを越える作品はできない、というのは世界中が認めるところでしょうから。
しかもクラスメイトとか先生とかけっこう早いうちから味方が出てくるので、かわいそうになってくるのは断然敵役のクリスのほう。どうしようもないボーイフレンドにそそのかされて道を外していく様を見ていると、パパの心が痛みます。
だからね、クライマックスのシーンでも「え!ホントにみんな殺しちゃうの?!」なんて思っちゃう。悪いのはママとクリスだけなんだから、あとはほとんど味方なんだから、みんなに助けてもらってハッピーエンドでいいじゃない、なんて。
このへんまでくると自分でも気づくわけです。あ、僕クロエちゃんに幸せになってもらいたいだけだ(笑)と。つまりこれ、ホラーテイストなクロエ・グレース・モレッツのアイドル映画なんじゃないかと。
デ・パルマ版ははっきり言ってトラウマですからね。幼い僕は心臓をえぐられたようなショックを受けましたから。観てない人はとりあえず「キャリー 1976」でGoogle画像検索してみてください。血まみれのシシーが目を見開いた画像だけでも尋常じゃない狂気が伝わると思います。
デ・パルマ版のキャリーが多くの人々の心を揺さぶるのは、「恐怖」よりも「悲哀」が底に這っているからでしょう。
対してクロエ版キャリーはそこまで重くないです。気づいたら「こんなカワイイ子をいじめるんじゃない!」という中学生のような気持ちで応援しちゃってましたから。そういう映画なんです。とりあえず『キック・アス』借りてこようっと。70点。
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