竜さん
かりん様〜、「アリとキリギリス」ってお話知ってる?

かりん様
もちろんだニャー

竜さん
あの話おかしくない?

かりん様
どこがニャー?

竜さん
だってかりん様いつも「好きなことだけやって生きたほうが幸せになる」って言うけど、遊んでばかりいたキリギリスは冬に食べるモノがなくて死んじゃうんだよ!ぜんぜんダメじゃん!

かりん様
ちがうニャー。おまえあのお話の教訓知ってるの?

竜さん
いやだから、「きちんと仕事をしてリスクに備えておかないと後でヤバイことになるぞー」って話でしょ?

かりん様
ちがうニャー!ぜんぜんちがうニャー!
あの話はな、
イヤなことでも必死でがんばって働くと、困っている人にも手をさしのべられない「心の貧しい人」になっちまうぞー!って話だニャー!

竜さん
え?悪いのアリなの?

かりん様
そうだニャー。そんなもんWikipediaにも書いてあるわ。お得意のGoogle先生に聞いてミイ。

竜さん
マジか!

かりん様
そもそもキリギリスが好きなことだけやってたら、勝手にうまくいくんじゃい。
誰かが「バイオリンうまいですね〜、今度コンサートやってくれませんかー?」とか声かけてくるかもしれないじゃんか。「CD出しませんか〜?」とか。

竜さん
でも、現実はそんなうまくいくかな?(そういやなぜかキリギリスってバイオリン弾いてるイメージだな笑)

かりん様
いくんだニャー!やったことがないから信じられないんだニャー!

竜さん
はあ……(それが本当だったら誰でもCDデビューできちゃうじゃんか……)

かりん様
じゃあキリギリスが遊びほうけててうまくいかなかったとするワイ。そしたらアリが助けてやればいいじゃないのよ!なんで困ってるキリギリスに食べもの分けてあげないのよ?鬼畜なの?人類皆兄弟ちゃうの?

竜さん
そりゃあやっぱ自業自得というか、自分が働かなかったのが悪いわけで……。

かりん様
ちゃうちゃう!アリの心が荒んどんねん!
アリは夏のあいだずーっと、イヤイヤ仕事しながら、遊んでるキリギリスを羨ましそうに眺めてたんよ。
「あいつばっかりズリーなー」って思いながら、つらいことばっかやって苦しんでるから、そのうち「あんな野郎は死んじまえばいいんだ」って思うようになったんよ。

竜さん
そ、そこまでヒドくはないんじゃないの?(笑)

それに、いずれにせよアリはちゃんと働いて結果出してんだから別にいいじゃん。自分ががんばったんだから自分だけは生きのびていいじゃん!


かりん様
けど、それって幸せかニャー?

歯を食いしばってしんどい仕事をがんばって、困ってる人をせせら笑いながら冬を越して「あーがんばってよかったわー、幸せやわー」って思うかニャ?

夏も働いてつらい、冬は寒くてつらい。いつになったら楽しくなるんだニャ?


竜さん
……幸せかどうかわかんないけど、そういうもんでしょ、世界って。

かりん様
ちがうニャー!ぜんぜんちがうニャー!
世界はムチャクチャ甘いんだニャー!プーさんのハチミツくらいスウィートだニャー!

かりん様
実際のところ、キリギリスは死にはせんよ。

竜さん
なんで?

かりん様
誰かが必ず助けてくれるんじゃい。
心の荒んだアリが食べものを分けてくれなくても、世の中にはまだまだテントウムシもチョウチョもダンゴムシもたくさんいるわい。

空を舞っておいしい蜜ばっかり吸って「好きなことだけ」やってるチョウチョは、キリギリスのことを「うらやましく」思ったりしないから、喜んで助けてくれるんじゃい。
「あー今年はうまくいかなかったのね〜。じゃあこれ食べて元気出しなよ〜♡」って言ってチューまでしてくれるワイ。


竜さん
えーーーーー!そんなウマイ話はないでしょーーー!
だって僕が辛くて苦しくて会社に行けなくなったときに、誰も助けてくれなかったよ!チョウチョもテントウムシも来てくれなかったよー!

かりん様
それは

かりん様
おまえが

かりん様
「助けないでー!」って言ってたからニャー。

かりん様
チョウチョが「食べものあげるよー」って言っても、無理やり笑顔作って「ボクぜんぜん大丈夫だよ〜」って強がってたからニャー。

おまえが勝手に、世界はつらいものだと思いこんで、みんなに「NO!」って叫びつづけてたからニャー。


竜さん
……NOなんて言ってたのかな?

かりん様
キリギリスは、いつも好きなことだけやってハッピーな気分で生きてるから、かんたんに人を頼れるんじゃい。

世界はハチミツみたいに甘いって知ってるから、チョウチョが来たら躍りあがって喜んで「ありがとー♡」ってもらうねん。
そんな風に喜んでくれたら、チョウチョもうれしくなって、ますますいろいろ助けてくれんねん。


竜さん
……。じゃあボクは、あのときどうすればよかったのさ?

つらくて、苦しくて、自分なんて死んだほうがいいって思ってたボクにとって、人を頼るなんてかんたんにできなかったよ。

口では簡単に言えるけど、目に見えないプライドは、自分じゃそう簡単に壊せないよ!

そしたら、どうすればいいんだよ!!!


かりん様
答えはかんたんだニャ。

かりん様
泣いたらええがな。おもっくそ泣いたらいいんだニャー!

竜さん
泣いたって何も変わらないし、いい大人がそんなすぐに泣けないよ。

かりん様
泣けるさ。自分にこう言ってあげるだけでいい。

かりん様
「もう、泣いたっていいんだよ」ってニャ。

かりん様
そしたら、そのうち勝手に涙出てくるワイ。

いつの間にか号泣できるワイ。

号泣したら、自分がこれまでどれだけ苦しかったのか、どれだけがんばってきたのか、やっとわかるワイ。

号泣したら、その声が誰かに届いて、助けに来てくれるワイ。


竜さん
そんなうまくいくかな?

かりん様
行くんだニャー!

かりん様
アリが悪いとは言わんよ。

でも、いっつもニコニコしてるのは、やっぱりキリギリスなんだよ。そんだけのことだニャー。