北野武さんはね、絶対的存在だったお母さんに敷かれたレールに乗って大学に進んだんだって。

昼も夜も死にものぐるいで働きながら、飲んだくれの親父さんと三人の子どもの面倒を見てくれた母親は神さまみたいなもんだっただろうし、そんなお母さんしか知らないから、大学に行くのがアタリマエだと。

でもだんだん、自分が何をすればいいのかわからなくなって、その答えが見つからないまま死んじゃうってことがとてつもなく怖くなって、あることを思いついた。

「そうだ、大学を辞めよう」

どこからそういう考えが降ってきたかは、よく憶えていない。雲ひとつない空に稲妻が走るように、その考えが頭の中で閃いた。飛び降り自殺でもするような気分だった。

引用元:『全思考』北野武

たけしさんにとって大学をやめるってことは、お母さん=神さまに背くことであって、自殺するのと同じことだったんだって。でもそれはそのときの、唯一のたしかな答えだったと。

これって、たけしさんのパッカーンだよな。

親のために大学まで行ったんだけど(それはそれで幸せだったんだけど)、なんかちげーなーっていう違和感をちゃんと受け止めて、神さまに逆らうのはおっかないけど、自殺するつもりで大学やめちゃった。

それがなかったら、ビートたけしという芸人はこの世に存在しなかったわけだ。

たけしさんはその後、オートバイ事故で生死の境を彷徨って、もっかい「死」とガッチリ向き合ってセカンド・パッカーンするわけじゃない?

うちのママちゃんがそうなんだけど、思いこみとかトラウマとかの過去の鎖を断ち切るには、やっぱりそれまでの自分が「死ぬ」しかないんだよなあ、と思うよ。

いや、そんなことしなくても断ち切れるっていうのもわかるんだけどさ、でもね、やっぱり完全に死にきれなかったボクよりも、一回本当に自殺した(あくまで心の話だよ)ママちゃんのほうが、キレイさっぱり新しい人生を生きてるんですよ実際。

その上でね、心屋さんとかオレが言うように「過去の鎖とかトラウマとか悩みがあってもいいよ。解決しなくていいよ。それより楽しいことやろうぜい」って思ってるわけなんだけどさ。

▶ そうだ、竜さんに話してみよう