前回☞ 竹林と渡月橋に忘れ物ひとつ〈京へ西へ。その十六〉

嵐山を後にして、待ち客がプラットフォームに入りきれないほどの大混雑のなか、ふたたび山陰本線に乗って、どうにか京都駅に到着。

くったくたなので、今日は、駅近くのホテルにしておいて本当によかった!

ホテルには大浴場があるので、とりあえず熱い湯に身体を伸ばして、ビールだ!

と、コンビニで缶ビールとからあげクンを買ってチェックイン。

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残念ながら、東本願寺を覗く町側の部屋ではなかったけれど、モダンでおちつく、いい感じの部屋。ちなみに、東本願寺が見える部屋はスイートらしい。そりゃそうか。

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何より、昨日までの木屋町通りの風情ある宿は最高だったけど、鍵のない民宿のような旅館だったので、いろいろ気をつかうところもあったのだけれど、今日は完全な洋風スタイルのホテルなので、誰にも気をつかわずのんびりできる。

檜の香るお洒落な浴場で、気持ちよく身体を伸ばし、こわばった筋肉をゆるめ、部屋に戻ると、からあげクンとスーパードライで、お疲れさま〜と一人乾杯。

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いやあ、ほんとに疲れたわあ。

この疲労を乗り越えると、ようやく旅の身体になって、またもう一次元上がっていけるのはわかってるんだけど、とりあえずのんびりしようぜと。

さて、今夜は、オレの京都のもう一つの目的がある。

京都発祥のラーメン〈新福菜館〉へ行くのだ。

オレの好きな小説に出てくる店で、以前、暖簾分けした店が麻布十番にあるってんで、そこでは食べたことあるんだけど、やっぱり京まで上ったら、本店に行かないとイカンでしょう!

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ホテルから歩いて数分、着きましたぜ新福菜館。

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おお、並んでる!やっぱり人気あるんだな!

でも、昔ながらのチャキチャキしたラーメン屋らしく、回転が速いので、わりとすぐに入れました。

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待ってるあいだに食べログでメニューはチェックして決めておいたので、席に着くと、

「並にメンマ入れて。あとヤキメシとビール!」

と、なぜか慣れた口調で常連ぶってみる。

料理を待ってるあいだ、ホールに、働き始めたばっかりっぽい若いおにいちゃんがいて、店の大将みたいなベテランのおにいちゃんに、けっこうキツく指導されながら働いてんの。

客の前でスタッフを叱る店って基本的にはイヤだけど、ここはなんだろう?昔ながらの人情っていうか、厳しさの底にあったかさを感じたのかしら、ちっともイヤな感じはしなくてね。

「ちゃんとビールの銘柄確認したのかよ?」なんてガラわるく叱られてんだけど、おにいちゃんもハイ!って元気にやってる。

だからオレも自然と、心の中で、がんばれよにいちゃん!って気になって、応援しちゃう。

今は、なんでもかんでもハラスメントって名づけちゃったり、ちょっと厳しいとやめちゃうなんて話も聞くけど、いつの時代だって、信頼関係が成立してるかどうか、だよな。

やめたい奴はやめればいいし、やりたい奴はやればいいし、世界はいつだって自由だ。

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ハイ、出ました、真っ黒なヤキメシ!

コレがうまいんだわあ。パラパラしてなくてね。どっちかというとベチャってるんだけど、ココはコレがいいの。

麻布十番もパラパラって感じじゃなかった気がするけど、本店はもっとベチョってて、最高にうまいわい!

だってチャーハンじゃないもんね、これはヤキメシなんだから、コレでいいのよ!

なんて、チャーハンとヤキメシの違いもわからないくせに、そんなことを考えながらニコニコしながらかっこんでたら、厨房から

「チャーハンいっちょう!」

なんて威勢のいい声が聞こえてきて。

メニューにはヤキメシってあるのに、店員さんチャーハン言うてるやん笑。

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ラーメンのスープも真っ黒でね、だからって濃すぎるわけじゃないの。どっちかっていうとさっぱりしてて、力強さは感じるけど、どっかやさしくて、こんな見た目だけど、京都らしさも感じたりして。

麺は麻布十番よりモチモチしてたかな。太くって、スゲえうまかったよ。

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ラーメンにヤキメシにビールなんていけるかな、って不安だったけど、ぺろっと平らげた、瞬殺で。

パパッと食って、慣れた風を装ってさっとお会計して、ごっそさん!なんて言って、チャチャッと出てきたよ。

ラーメンもヤキメシも、そして店の空気も、すべておいしく堪能いたしました。つづく。

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