犬の短期記憶は、せいぜい四秒程度だ──、なんて話があります。
たしかに、毎日、躍動する犬を見ていると、ああ、きっとこいつは、今この瞬間だけを生きているんだなあ、と感じることが多い。
朝起きて、部屋のドアを開けると、ちぎれんばかりにぶんぶんとシッポを振って、ハアハア息をして、全身で喜びを表している。
ゴハンをあげても、おもちゃで遊んでも、散歩に出かけても、おやつをあげても、背中や首をゴシゴシ撫でても、昨日と同じことをしているだけなのに、ほんとうにほんとうに、楽しそうで嬉しそう。
うちの子はかなり元気なほうなので、もしかしたら感情表現が豊かなのかもしれないけれど、この子は毎瞬間、目の前にあるものをそのまま感じているんだなあ、ということがよくわかります。
たった四秒しか憶えていなくても、その四秒が積み重なると、長期記憶になるようです。だから、犬にだってちゃんと、思い出──ができるんですね。
人間も同じ。犬のように、今この瞬間を生きていると、犬のように、喜びや生命が躍動する。
短期記憶──今この瞬間──が積み重なって、長期記憶になる。
今この瞬間の喜び、躍動する生命感、しあわせな気持ち、それらが積み重なって、人生になる。
人生とは、今日のこと、今のこと──この喜びのこと。
犬はいろんなことを教えてくれる。毎日のゴハン、歩くこと、生きること、今ここに在ること──。
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