コラム/エッセイ

僕のバスケットボール・ダイアリーズ。

Basket
Basket / BigTallGuy
中学も高校もバスケ部だったけど、ずっと補欠だった。

今思えば、バスケの才能や元来の運動神経が足りなかったのだろうし、人より余計に練習したわけでもなかったから当然かもしれないけど、何より僕に足りなかったのは、負けたくない、という闘争心だった。

中学の引退試合の帰り道、マイクロバスの車窓から眺めた涙まじりの風景は今でも鮮明に覚えている。だけど僕が流した涙は、みんなのそれとは違っていた。

スポーツ振興くじ「toto」のCM『最後の試合』が話題になっている。そこには、引退試合に出られなくて悔しい想いを抱く吉田という少年の健気な姿が描かれ、ぐっと心に迫るものがある。90秒足らずなのでぜひ見てほしい。

 

 

映画『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が描く若者のリアルは胸を熱くさせるのだが、僕は吉田少年の上にかつての自分の姿を投影させることができなかった。

あの頃の僕には、吉田が抱く「試合に出たい!」という強烈な意志が欠けていた。純粋にバスケが好きだったけど、毎日部活で仲間と楽しくバスケができればそれだけで満足だった。

バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンが世界一のプレーヤーになれたのは、彼が世界一の負けず嫌いだったからだという。だとしたら、僕は永遠に彼に近づくことはできないじゃないか、と気がついた頃には、中学三年生になっていた。

中学の引退試合、いつも通り補欠スタートだった僕の名前は、けっきょく最後まで呼ばれなかった。帰りのマイクロバスでは、選手たちのすすり泣く声だけが響いていた。まだ来年がある後輩たちも含めて、ほとんどの部員が泣いているのに、僕の目からは涙がこぼれなかった。

終わったんだな、というささやかな感慨と、さすがに最後は出たかったな、という気持ちはあったものの、試合に負けたことに対する悔しさや憤りみたいなものは、やっぱり出てこない。

僕は「泣かなくちゃ」と焦った。みんながこんなに顔をくしゃくしゃにして泣いているのに、僕だけ平気な顔をしているわけにはいかないじゃないか。泣かなくちゃ、泣かなくちゃ、泣かなくちゃ。

みんなに見られないように窓から顔を出して、そんなことを考えているうちに、いつの間にか僕は泣いていた。

みんなと同じように試合に負けた悔しさで泣きたいのに、泣けない自分に腹が立って、それが哀しくて、涙がぽろぽろこぼれてきたのだった。

Gymnasium, Rokugo elementary school
Gymnasium, Rokugo elementary school / keyaki
大人になってから、ある年配の女性の友人にこの話をすると、その人は目を細めてこう言った。

「あなたは誰よりもやさしい。それでいいじゃない。いろんな人が、いろんなもの背負って生きてるんだから」

僕は何年も経って、ようやく許されたような気がした。バスケに情熱を持って青春を捧げた仲間たちに、あのとき泣けなかったことをずっと恥じていた自分に、許された気がした。

今年、十四歳になる長男は、毎日部活でサッカーボールを追いかけている。以前は「そんなんじゃプロどころかレギュラーにだってなれないぞ」と叱責することもあったけど、最近はあまり口を出さないようにしている。蛙の子は蛙。彼も今が楽しくてしょうがないのかもしれないのだから。

それでも、その挫折が、その悔しさが、その痛みが、いつか彼を強くする。吉田のシュートは、いつか決まる日が来る。スポーツだけが教えてくれることが、たしかにある。

「モノクロならいい写真が撮れるとでも思ったかい?」とあいつは言った。『Hueless』 | THE KLOCKWORKS



「カバンが重くなるからお弁当いらない」と言ってしまったことを私は死ぬまで忘れないだろう。 | THE KLOCKWORKS

 

 

 

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