コラム/エッセイ

無人島にひとつだけ〇〇〇を持っていくとしたら?

Small Island Between Mustique and Canouan
Small Island Between Mustique and Canouan / Jason Pratt
「無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら?」という設問に、たしか村上春樹さんはエッセイの中で、外国語の辞書か、あるいは原稿用紙とペンを持っていく、と答えていたと思う。

たしかに辞書や百科事典などであれば、書かれている量は膨大であるし、内容は厳然たる事実のみなので、想像が広がってなかなか飽きがこないかもしれない。原稿用紙とペンというのは、作家である春樹さんだから言える反則的な答えだが(そもそも本じゃないしw)、想像力さえあれば永遠に物語が紡ぎ出せるという点で、他にかなうものはないだろう。

同じく春樹さんは、無人島にひとつだけ持っていく楽曲を、バッハの「無伴奏チェロ組曲」と答えていた(たしか)。エヴァでシンジくんが第一番の前奏曲を弾いていたやつ。なるほどたしかに、まず歌詞のある曲はとうてい永遠に堪えられないだろうし、そうなるとクラシックが有利で、バッハの包容力と普遍性は納得で、この曲がベストに思えてくる。

ホレたハレたの恋愛ソングや社会的なメッセージソングを持っていっても、独りで無人島で聴いたら笑っちゃうだろうな。そんなことはどうでもいいよ!って。だいたい恋の歌っていうのは失恋か片思いなんだから、寂しいところでもっと寂しくなってどうするんだよってね。

さて、僕なら無人島に何を持っていくだろうか。

一曲だけ持っていくとしたら、春樹さんと同じく無伴奏チェロ組曲だろうか。あるいは反則的にアコースティックギター、と言いたいところだけど、それじゃあ設問の趣旨にあまりにも反するし、材料が豊富そうな無人島ならギターくらい作れそうな気もする。

一冊だけ本を持っていくとしたら、うーん、やっぱり僕も辞典系になっちゃうかな。あるいは中村天風全集とか世界偉人伝全集とかも悪くないかもしれない。いやでも、無人島まで行って天風先生に説教されるのもいやかな。無難なのは歴史書だろう。ちなみに僕が20代の頃に書いていたブログに同じような内容のエントリーがあって、そこには「二十歳の頃から書き綴っている身辺雑記を持っていく」と書いてあった。自分の半生を持っていくというのは悪くない気もするけど、どんだけ自分のこと好きなんだよって、気持ち悪いかも。いずれにせよ、限られた島の中から、世界を知ることのできる本を持っていきたいね。

一葉だけ写真を持っていくとしたら、20代の僕は「携帯の待受に使っている家族で海で撮った写真」と書いているけど、そんなの持っていったら寂しくて発狂して死んでしまうかもしれないなあ。あれ?でも、別に独りで無人島に行くわけじゃないのかな?だったらスカーレット・ヨハンソンの水着のピンナップとか……。

一本だけ映画を持っていくとしたら、大好きな「ゴッドファーザー」シリーズかなあ。でもシリーズが許されるなら「ハリーポッター」のほうが続編が多いし、子役の成長とか見て楽しめそうだし。「スモーク」なんて持っていったら街が恋しくなっちゃって、煙草が欲しくなってその辺の葉っぱに火をつけて吸っちゃうかもね。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とかのSFで永遠に現実逃避するのもいいし、「岸和田少年愚連隊」とか「スタンド・バイ・ミー」で永遠に青春を謳歌するのも悪くない。「シャイニング」を持っていってジャック・ニコルソンから永遠に逃げつづけるのだけはゴメンだけど。

あるいは何でもいいからひとつだけ持っていけるとしたら、何になるんだろうか。

僕が毎日いちばん多く触っているモノはたぶんiPhoneかMacBook Airなんだけど、こんなもの電波や電気がなければクソの役にも立たないわけで。

Seaside Musician
Seaside Musician / naotakem

そうなると、どんな本や音楽や写真や映画やガジェットを持っていっても、いつかは必ず飽きるか使えなくなってしまうんだから、やっぱりギターかなあ、なんて真剣に思う。

ギターだって毎日弾いてりゃ飽きちゃうだろうけど、味気ない無人島の日常に、メロディが流れているかいないかって、大きな違いがあると思うんだよなあ。

なんてことをのどかに考えていたら、いつでもどこでも音楽が聴けて、ネットに繋いで仕事をしたり情報を得たり、毎日美味しいゴハンが食べられて、庭でビールを飲みながら家族と笑えるこの日常の、なんて素晴らしいこと。なんて幸せなこと。ぼかあすでに、世界一のしあわせものかもしれんなあ。

マテリアル・ワールドにどっぷり浸かっている僕らだけど、たまには「足ることを知る」ことも大事ですね。もうちょっとだけ質素に、もうちょっとだけつつましく。

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