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(2014年夏・山梨県道志の森にて)
なんでわざわざバイクで何日も旅に出るのか?

自分でも不思議になることがあります。

雨が降れば濡れるし、夏でも山奥は寒いし、荷物もあまり積めないから不便ばかり。1人用の狭いテントに丸くなって、ゴツゴツした地面を感じながらどうにか眠りにつく。

好きでもない人からしたら、過酷な荒行ですよ実際。バカじゃないの?ってたまに自分でも思う。

でもね、それなりに、素敵なことが待っていたりするのも事実なんです。

完全に独りになれるから

僕がバイク野宿一人旅に出る第一義は、孤独です。

独りになるために、旅に出る。

若い頃に、芥川賞作家・花村萬月さんの

「押しつけられた孤独は辛いものですが、自ら選択した孤独は格別です」

という言葉に触れてから、僕は孤独に取り憑かれてしまった。

家族も友人もいない押しつけられた孤独は耐えられない苦痛だけど、自分から選んだ孤独は、とてつもない安堵と癒やしをもたらしてくれるんです。

いつも私たちは喋りすぎているのではないでしょうか。

じつは、交わりすぎている。否応なしに交わらされている。 いいですか。あなたには、孤独になる自由が、ある。

自由に至る旅―オートバイの魅力・野宿の愉しみ (集英社新書)』花村萬月

僕らはいつも誰かと一緒に生活している。独り暮らしでも、誰かと仕事をして、誰かのお店でごはんを食べて、誰かの接客で買い物をする。

いやおうなしに、誰かと生活させられている。

だからバイクで山奥に籠もるんです。旅館やホテルでは本物の孤独にはならないですから。

家に籠もって布団をかぶる孤独は僕らの心を蝕むけれど、大自然に吹く風を切ってバイクで走る孤独は、僕を魂から癒やしてくれます。

日常が輝きだすから

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もっと言えば、自ら孤独になって、とことん寂しくなって帰ってくるんです。

そしたら今まで色褪せていた日常が輝きだします。

自分の人生がどれだけ素敵だったのか、どれだけ恵まれているのかを心から実感します。

あまり意識していなかった人にも、苦手だった人にも、すこしやさしくなれます。

大げさじゃなくて、日常が輝きだすんです。

逆に、旅の終わりが寂しいとしたら、孤独を味わい尽くせていないからでしょう。

お金がかからないから

食糧を含めた宿泊道具一式を積んでバイク一台で走るのですから、当然旅費はとても安くすみます。

夏に予定している北海道一周とかだと、フェリー代やら何やらそれなりにかかりますが、それでも飛行機とホテルを使う通常の旅行とは比べものになりません。

とことんお金をかけたぜいたくな旅行もいいですが(そんなの行けないけど)、お金がかからないということは、たくさん旅に出られるということです。

豪華な旅行を年に1回するくらいなら、バイク旅をたくさんしたほうが楽しい。

まだまだ世界には、いや日本にだって、行くべき場所はいくらでもある。もたもたしてると死んじゃうもの。

カッコイイと思いこんでるから

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あと単純に、荷物をぎょうさん積んで見知らぬ土地を独りで走っている自分を、カッコイイと思ってます、みんな、確実に(笑)。

まわりから見たら単なる汚らしい部外者なんだけど、本人は流浪の旅人気分。

それはそれでいいでしょう!楽しいんだから(笑)。

だから僕も、ウェアラブルカメラとかiPhoneのワイドレンズとかセルカ棒とか、いろいろ持ってっていろいろ撮影してきます。

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孤独うんぬんとかカッコつけたことをぬかしたりもしましたが、けっきょくは楽しくってしょうがないんです。

ひとことで言えば、大人のワガママな遊びですわ。

けれどもしかしたら、四十路の僕でも、出かける前よりはほんのすこし、いい男になって帰ってくるかもしれません。

そのときは遠慮なく「りゅうちゃん、いい男になったよ!」って言ってやってくださいね。