中村天風だって壺の中の水を捨てられたから心をひらいて伝説の哲人になれたわけで。

昔々あるところに、経営の神様・松下幸之助さんや京セラ創業者・稲森和夫さん、最近では松岡修造さんなど、数々の著名人たちが師と仰いだ中村天風という思想家というか哲学者というか、明治生まれのイカツイじいさんがおりました。

天風は若い頃結核で死にそうだったんだけど、ヨーガの大聖人カリアッパ師というすんげー偉い人についていって、ヒマラヤ山麓で修行をするという『バットマン・ビギンズ』みたいな現実離れした体験を経ていわゆるひとつの「悟り」をひらくわけですが、その修行を始めるところのエピソードが非常におもしろいんですね。

誰かに悩みを相談したりカウンセリングを受けたり、本を読んだりして心の「在り方」を勉強しているのに、なんだか腑に落ちないなあ、モヤモヤが消えないなあという人には何らかのヒントになるかもしれませんよー。

ぜんぜん準備できてないじゃーん

天風はエジプトかどっかで偶然カリアッパ師に出会い、「おまえが気づいていない大切なことを教えてやろう。それがわかればおまえは死なずにすむよー」って言われて、とてつもない秘境のような未開の村に連れて行かれるんだけど、2ヶ月くらい経ってもぜんぜん教えてくれないの。

いくらこっちからは話しかけることすら許されないほどのとんでもなく偉い聖人でもさすがにしびれを切らした天風は、

「大切なこと教えてくれるって言ったのに、いつになったら教えてもらえるんですか!」

と言っちゃいます(口調は筆者がアレンジしております)。すると師は

「いやー私的にはいつでもいいんだけどねー。っていうかすぐにでも教えたかったんだけど、教わるおまえの準備ができてないからさー、待ってたんだよー」と言う。

天風「いやいや準備なんてとっくにできてますがな!」

「いやいやぜんぜんできてないじゃーん」

何が何だかわからない天風に師は「どうしてもわかんないなら、あそこの壺に水をいっぱい入れて持っておいで」と言います。同じようにもう一つの壺にはお湯をいっぱい入れて用意させます。

「そんじゃーその水の壺にお湯を入れてみてちょ」

天風「入らないッスよ……あふれちゃうじゃないすか(バカなの?)」

「はいそれー、そういうことー、おまえの心はこの壺と同じなのよ。冷たい水がいっぱいはいってるからね、私が温かいお湯を入れてやろうと思っても、ぜんぶあふれちゃうのよ。私が何を言おうと、おまえはそれを受け取らないよねー」

と言って、どっか行っちゃった。

水(自分)をバシャーッと捨てちゃえば?

中村天風って人は、子どもの頃はすんげー暴れん坊だったんだけど、勉強もすごくできたんですね。幼い頃から英語が得意で、中学校に進む子がまだ少なかった時代にコロンビア大学の医学部を出てる超スーパーエリートだったわけです。日露戦争ではスパイまでやって100人くらい死んでる中で生き残ってるんだから頭脳明晰で肉体的強靱さも兼ね備えたリアル007ですよ。

そんな鼻の伸びきったエリート天風は、どこかでカリアッパ師や未開の村の住民をバカにしていたそうです。最近で言う「ジャッジする」というやつですね。

「教えてください!」なんて言いながら、どこかで「なんだかんだ言ってもオレのほうが頭いいべ」って思ってたのかも。そんな人に何を教えても理解しませんよね。

鬱病になったり大きな病気やケガをしたりした人がパッカーンと心をひらくのは、強制的に壺の水をバシャーッとこぼしたからなんですね。今まで信じていた「常識」「大前提」「思いこみ」じゃダメじゃん!って思い知らされたところに、温かいお湯が注がれたので、うわ〜気持ちえ〜わ〜極楽極楽〜♫となれたわけです。

そういう幸せのお湯を入れたい人は、まず壺の中の水(自分)を捨てることを考えてみてください。もちろん、今のまんまでじゅうぶん幸せ!って人は、もう心地よい温度のお湯になってるでしょうから、今までどおりぬくぬく生きていけばいいわけです。

自分を捨てるいちばん効果的な方法は「泣きつく」ことです。助けて〜うえ〜ん痛いよ〜うえ〜んお金貸して〜うえ〜んって、ぜーんぶさらけ出すことです。それができないのなら、ひきつづき自分の力でがんばりましょう(笑)!歯を食いしばって、無理して、気合い入れて、ストレス溜めて、一生懸命がんばりましょう!どっちでも、好きなように生きましょーアディオス!

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