Outdoor Fireplace Design by Robert E. Taft Landscape Architecture
Outdoor Fireplace Design by Robert E. Taft Landscape Architecture / Landscape Design Advisor
 

あなたは疲れているはずだ。

そんなことはない、と言うかもしれないが、あなたは何年も続いたその同じような仕事と生活に慣れ切ってしまって、身体の奥底に澱のように沈む慢性的疲労を自覚できていないのではないだろうか。

あるいはあなたはうつむいているはずだ。職場や家庭、交友関係などに生じる問題や将来への漠然とした不安など、大小のストレスを抱えて、心までも疲弊させて重い溜息を漏らしてやいないだろうか。

こういったタイプの心身の慢性的な疲労は、解消されなければ意識できないことが多い。たっぷり休養をとってすっかり元気になってはじめて、ああ、自分はこんなに疲れていたんだなあ、元気っていうのはこんな感じだったのかあ、と自覚するのである。


僕がこの記事を通じてあなたに言いたいのは「次の週末には一日空けて岩盤浴へいってください」ということだ。一日といわず午後だけだっていい。とにかく気持ちもゆっくりできるくらいの時間をとってほしい。岩盤浴にはそれだけの価値がある。

僕はこれまでに『僕が岩盤浴で身体だけじゃなく心からも汗をかいてハッピーにデトックス(解毒)する方法』『疲れてるのに熟睡できないあなたが今すぐ岩盤浴へ行くべき9つの理由』という岩盤浴に関する二つの記事を書いたが、それでもなお飽き足らずこんな記事をせっせと書いているのは、岩盤浴にはそれだけの価値があるからだ。

前置きが長くなったが、岩盤浴の魅力を一言で言えば、入浴する前と違う自分になれる、ということだ。究極のリフレッシュ、心身の再起動とでも言えばいいだろうか。

岩盤浴の具体的な効能は上記の記事を参考にしてもらうとして、まずは僕の入浴方法を説明する。

いつも通っているのは茅ヶ崎にある『竜泉寺の湯』といういわゆるスーパー銭湯。まだ店舗数はそれほど多くないようだが、入浴料600円に岩盤浴300円というリーズナブルな価格設定や、種類豊富な岩盤浴施設と入浴施設、美味しい食事処などが魅力だ。特にここの岩盤浴室は限界まで照明を落としてあり、プラネタリウムで流れているような神秘的な音楽が囁くような音量で流れているので、気持ちがすうっと安らぎ、非現実に埋没しやすい工夫がなされている。

僕は十五分入浴して十分休むというサイクルでトータル三時間ほど岩盤浴に入る。その間に500ミリリットル入りのミネラルウォーターを三本飲むのだが、最終的には体重が1キログラムほど減っている。単純に計算すれば、1.5リットルの水を摂取した上で1キログラム減少しているということは、2.5リットルもの汗をかいたことになる。

身体から排泄されるのは汗ばかりではない。お日様のごとくあたためられた丸く艶やかな石の上に寝そべると、肩や首などの強ばりや全身の力みがすっと消えていく。寒い季節であれば、あたたかい岩盤浴室に入るだけで思わずほくそ笑んでしまうほどに幸福感が這い上ってくる。

身体がほぐれれば、心もほぐれるのだ。逆に言えば、心が張りつめていれば身体がガチガチになるし、身体が強ばっていれば心も緊張を解けない。岩盤浴でリラックスすると、自分がずいぶん長いあいだ全身の力を抜かずに生活していたことに気がつくだろう。

あなたに必要なのは、今は何も考えずにリラックスしていいんだよ、と自分に言い聞かせることである。ふだんからがんばっているあなたは、もっと休息を取っていいはずだ。だからそれなりの時間を用意してほしいのだ。

Onsen at Sunrise
Onsen at Sunrise / sakamencho
岩盤浴で、汗だけでなくストレスや負の感情などの心の毒を身体の外に追いやるためには、ある程度の思考のコントロールが必要になる。思考をほったらかしにしておくと、僕らの脳は不安なことやマイナスのことばかり思い浮かべてしまうからだ。

まずは将来の理想的な自分を想像しよう。十年後でも五年後でも、来週だっていい、自分がどんな仕事をして、どんな人と、どんな場所に住んで、何をして愉しんでいるのか、というのをできるだけリアルに想像して、わくわくするのだ。忙しない日常では難しい妄想も、岩盤浴の非現実的な雰囲気とやさしいあたたかさに包まれていると容易になる。

けれどそんなふうにどれだけ楽しいことを考えようとしても、ふいに来週の仕事の心配事や家庭の問題などを思い出してしまうかもしれない。そんなときは瞑想をするときのように、それらの思考をひとつひとつ棚上げしてしまおう。「そういう問題もあるけど、今は脇にのけておこう」といって、忘却の彼方へ押しやってしまう。そうでないと、心配の種は雪だるま式に大きくなって、やがてあなたはうつむいて、心はガチガチに戻ってしまう。瞑想については以下の記事が参考になるだろう。

▶ 脳のメモリを解放して究極のリラックスを。『始めよう。瞑想』 | CLOCK LIFE.

温暖な地域に住む人たちは心もあたたかい、と言うように、人はあたたかいと心身がほころび、自分や他人にやさしくなれる。ハワイ好きの友人は、岩盤浴室に横たわって目を閉じるとワイキキビーチにいるような錯覚に陥るという。

また、ふだん忙しい現代人が、独り静かに暗いところに横になって、日常では考えられない深いところまで思慮を潜らせると、心がすっきりと洗われたようになる。「自ら選んだ孤独は人を優しくしてくれる」と言ったのは、花村萬月だったか。

Waikiki Beach
Waikiki Beach / FHKE
 大切なのは岩盤浴で大量の汗をかくことではなく、ワイキキのようにあたたかい空間で、心のずっと奥の方からリラックスすることだ。日常のしがらみと強ばりを完全に解き放つことだ。

岩盤浴は疲れる。血行を活発化させて2リットル以上もの汗をかくのだから当然だ。だからその日は無理に何かをするのではなく、美味しいものと少しのビールをたしなんで、すぐにあたたかいベッドにもぐりこんでしまおう。デトックスされて活性化された胃や内蔵に染みこむビールや食べ物は至福の味がするし、力の抜けた身体に触れる布団は昨日よりもずっとやわらかく心地よく感じられるだろう。

ビール
ビール / yto
ふだん眠りの浅い人もぐっすり眠りこけた翌朝には、生まれ変わった自分を実感できるかもしれない。

腹が減って目が覚める。朝陽が心地よい。早くベッドを出て何かやりたい。人に会いたい。学びたい。成長したい。愉しみたい。僕らはもっともっと積極的に生きるべきなのだと、沸々とやる気が溢れてくる。

もちろん岩盤浴へ行けばいつもこんなふうにリブートできるというわけではない。夏場はそれなりに汗をかくので効果も薄いし、ふだん継続的に運動をしている人にはそれほど劇的な変化は訪れないかもしれない。けれど、秋冬の季節や病みあがりの人、冷え性の人、ふだんあまり身体を動かさない人、新しい環境で心身の緊張が取れない人など、停滞を感じている人には、それなりの効果が見られるだろう。

いずれにせよ、忙しいスケジュールの中に無理やり岩盤浴の時間を用意するだけではダメだ。しっかり汗をかいたら、すこしだけ幸せな食事をとって、死んだように眠ることで、ようやく心も体も再起動できるのだから。

遠足は家に帰るまで、と言うけれど、岩盤浴は翌朝目が覚めるまで。ぜひこの至福のリラックスと劇的な再起動を味わってほしい。

下書き@岩盤浴 with するぷろ for iPhone.