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本代が馬鹿にならない。

ネットを眺めていると、毎日のように素晴らしい(ように見える)書籍が発売され、多く読まれている古典が見直され、友人たちが新たな知識に歓喜の声をあげている。

おまけにAmazonというお化けサイトのおかげで、購入を吟味する “間” すら与えられずに、新たな書籍を発見した喜びに乗ったまま、ワンクリックで購入。すぐさま手もとのKindleに配信されるか、翌日には宅配便のお兄さんの手によって玄関に積まれる。

けれど僕は忘れていた。この国には図書館という智恵の宝庫がそこらじゅうに建てられているのだということを。

若い頃は小説を書いてごはんを食べていきたいと思っていたので、読書といえば小説を読むことだった。数年前からビジネス書や実用書などを貪るようになり、より直接的で具体的で、かつ即効性のある知識や情報を求めるようになったが、最近になってまた小説を読むようになった。役に立つ知識だけに囲まれていると、息が詰まってしまうからだ。いつもきちんとした身なりの人と一緒にいると疲れてしまうように。

小説は物語なので、ビジネス書のようにラインを引いたりハイライトしたりメモを書きこむことがほとんどないのだから、図書館で借りればいいんじゃないか、という、やっている人なら至極当然の事実に気がついたのが秋の休日のことだった。

平日の疲れと週末の飲み疲れが体を重くしていて、家族でどこかへ出かける気力はないのだけれど、時間はそれなりにあるし子どもたちは外に出たくてウズウズしている。

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久しぶりに訪れた茅ヶ崎図書館は、数年前とほとんど変わっていなかった。僕はすぐさま小説コーナーへ進み、若い頃に心酔していた花村萬月の小説を手に取る。子どもたちは絵本、家内は料理本、僕はついでにインターネットや文章関連の実用書を探してみようと館内の検索端末に向かったが、キーボードに手をかけてしばらく考えた後に、思い直して席を立った。

とりあえず今日は「役に立つ情報」はいらない。小説とか料理とか音楽とか、人生を豊かにしてくれる副菜を味わおう。

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けっきょくこれだけの本を借りてきた。小説が三冊、レシピ本が五冊、その他諸々で十七冊。貸出期間は二週間で、家には他にも読んでいるビジネス書が数冊あるので、小説を三冊も読了することはできないかもしれない。だけどなんといっても図書館は無料である。好きな本を気分次第で乱読して、気に入った本だけを継続して愉しめばいい。

お金がかからないということは、失敗してもいいということだ。だから手当たり次第に気になった本を借りて、家でゆっくり吟味して取捨選択するという喜びがある。図書館が素晴らしいのはこういうところなんだろう。まったくもって今さらな話ではあるが。

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電子書籍はたしかに便利だけれど、遠くない未来にこの図書館というスペースがなくなってしまうのだとしたらそれは寂しい。

便利と豊かさは同じライン上にはないのかもしれない。図書館で、古くなった本のページを繰る人々を眺めていると、そんな気がしてくる。もっと図書館へ行こう。

読書という宝物。本を読むというただそれだけで、僕らはいつだって成長できるのに。 | CLOCK LIFE*

 

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