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夜寝る前に「ありがとうの石」を手に持って、今日一番嬉しかったことを思い出すという習慣をはじめた。

五歳の次女は歯を磨きながらしばらく考えた後に、満面の笑みで「保育園で出たおやつのビスケットが美味しかったこと」と言った。

彼女のとろけるような笑顔を見て、僕は今日もこの上なく幸せな気持ちで眠りにつく。

 

石に秘められた秘密

「ありがとうの石」には秘密がある。

一日の終わりに、その日一番よかったこと、嬉しかったことを思い出そうとすると、自然と素晴らしいことが次々と思い出されてくるのだ。

感謝できる多くのことを思い出し、いつの間にか幸せな気分になって、気持ちよく眠りにつくことができる。

感謝の小石の物語

この習慣は、『ザ・シークレット』という本で紹介されている「感謝の小石」という実話が基になっている。

人生がうまくいかず、すべてが悪い方向に向かっていると感じていたある男性が、偶然ひとつの小石を見つけ、ポケットに入れて持ち帰った。彼はその小石に触るたびに自分が感謝している何かを思い浮かべることにして、毎朝毎晩、ポケットに手を入れては感謝の思いを抱くようになっていた。

 

ある日、彼がポケットから落とした小石を見て、南アフリカ出身の男性が「それは何ですか?」と聞くので、彼が説明すると、男性はそれを感謝の石と呼びはじめた。

 

数日後、南アフリカに戻った男性から「息子が大変な病気で死にかけています。肝炎の一種なので、感謝の石を三つ送ってくれませんか」というメールが届いた。

 

元々道端にあったごく普通の小石だったので「もちろん」と返事をしたが、今回は特別な石でなければならないと考えて、川べりでそれにふさわしい石を見つけて送った。

 

数ヶ月後、男性から「おかげさまで息子は快復し、とても元気になりました」というメールが届いた。

 

更に男性は、感謝の小石と名づけて、小石を1個10ドルで1000個以上売り、そのお金は慈善活動に使ったという。

 

___『ザ・シークレット』ロンダ・バーン

ひとつの小石を持ち帰って感謝をするという習慣が、一人の子どもの命を救い、多額の慈善活動に役立てられたという。

すべてが悪い方向に向かっていると考え、何にも感謝をしないでいたら、見知らぬ南アフリカの男性に石のことを教えてあげたり、送ったりなんかしなかっただろう。

寝る前に「ありがとう」を言う。ただ、それだけ。

『ザ・シークレット』の続編『ザ・マジック』では、このお語を基に「魔法の小石」という感謝の習慣を勧めているが、僕は子どもたちにもわかりやすいように「ありがとうの石」と呼ぶことにしている。

ベッドに入る前に、ありがとうの石を手にして、しっかりと握りしめる。

その日起きた良いことをすべて思い出し、感謝できる「最高の出来事」を考える。それに対して「ありがとう」と心の底から言う。

ただ、それだけで、毎日が見違えるように変化していく。

はじめのうちは、むしろいやな気持ちになることもあったけど、子どもたちが小さな幸せを教えてくれた。

正直、はじめはあまり効果が見られなかった。

その日一番よかったことを思い出そうとしても、そうそう毎日素敵な出来事なんて起こらないし、むしろ「何もないつまらない一日だったな」なんて思ってしまって、いやな気分になることもあった。

ところがある日、自分だけでなく家族全員分の綺麗な石を探してきて、子どもたちと一緒にやるようにしたら、すぐに変化が現れた。

子どもたちは石をしっかりと握りしめて、今日一日のことを一生懸命考えて、心の底から嬉しそうに語り出したのだ。

「一番は手放しでスケボーに乗れたことだけど、あっちもよかったなあ、でもあれもなあ……」

嬉しそうに首をかしげながら、次から次へと嬉しかったことを思い出していく子どもたちを見ているうちに、僕も小さな喜びを実感することができるようになっていった。

人生はまんざらでもない

毎日劇的な変化が訪れるはずはない。いやなことばかりで、下を向きたくなる日だってあるだろう。

それでも「ありがとうの石」を握りしめて、目を閉じて一日を振り返ってみると、小さな幸せが転がっていたことに気がつくはずだ。

作家・中島らもはそれを「その日の天使」と呼んだ。

どんな憂鬱な日にも、必ず一人の天使が使わされているのだと。それはテレビのワンシーンかもしれないし、「やき〜いもっ!」という焼き芋屋の声かもしれないし、子どもたちの笑顔かもしれない。

人生はまんざらでもない。明日もきっと喜びに満ちている。

そう思いながら眠りにつけることは、人生の最高の幸せのひとつだと思うのだがどうだろうか。

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